国際税務

非居住者(海外在住)のアフィリエイト・ネット収入に日本の税金はかかるか——国内源泉所得の判定を税理士が解説

「日本の税金が高いから海外へ移住する」というブロガーやデジタルノマドの声は珍しくなくなった。だが、海外に住民票を移せば自動的に日本の税金がゼロになるわけではない。カギを握るのは、税務上の居住者・非居住者の区分と、非居住者が課税される国内源泉所得の範囲、そしてアフィリエイト・広告収入の源泉がどこにあるかという判定である。国税庁の一次情報をもとに、断定できる部分と実態判断に委ねられる難所を分けて整理する。

居住者・非居住者で課税範囲が変わる

日本の所得税は、まず個人を居住者非居住者に区分し、その区分に応じて課税される所得の範囲を変える構造になっている。

居住者とは、国内に住所を有するか、または現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人をいう(国税庁 No.2012)。ここでいう「住所」とは生活の本拠を指し、住居・職業・資産の所在・親族の居住状況・国籍などの客観的事実で総合判断される。「居所」は、生活の本拠という程度には至らないものの現実に居住している場所を指す。

この判定で誤解が多いのが「183日」だ。国税庁は明確に、1年の半分(183日)以上を海外で過ごしていても、生活の本拠が日本にあれば日本の居住者となりうると述べている。単純な滞在日数のカウントで居住者・非居住者が決まるわけではない。国内法の居住者判定と、租税条約の短期滞在者免税(いわゆる183日ルール)はまったく別の制度である点は、183日ルール(短期滞在者免税)の解説で整理したとおりだ。

課税範囲は、区分ごとに次のように定められている(国税庁 No.2010)。

  • 非永住者以外の居住者:国内・国外で生じたすべての所得(全世界所得課税)
  • 非永住者:日本国籍がなく、過去10年以内に国内に住所・居所を有した期間の合計が5年以下の居住者。国外源泉所得以外の所得の全部と、国外源泉所得のうち国内で支払われたもの・国外から国内へ送金されたものが課税対象
  • 非居住者国内源泉所得のみが課税対象

「海外移住=節税」というイメージは、この一番下、非居住者になれば国内源泉所得だけしか課税されない、という点に依拠している。だがそれは、実際に税務上の非居住者になれること、そして自分の収入が国内源泉所得に当たらないこと、という2つの条件が揃って初めて成り立つ。

居住者・非居住者の課税範囲の判定フロー図。日本の居住者なら原則全世界所得課税、非居住者は所得が国内源泉所得のときだけ日本で課税、国内源泉でなければ日本では課税されない

非居住者は「国内源泉所得」だけ課税される

非居住者として課税されるのは国内源泉所得に限られる。では国内源泉所得とは何か。所得税法はその範囲を列挙している(国税庁 No.2878)。代表的なものを挙げると、次のとおりだ。

  • 恒久的施設(PE)帰属所得、国内にある資産の運用・保有・譲渡により生ずる所得
  • 国内にある不動産等の貸付けの対価、国内不動産の譲渡対価
  • 国内において行う人的役務の提供に係る対価
  • 国内で業務を行う者から受ける工業所有権・著作権等の使用料で国内業務に係るもの
  • 国内において行う勤務等に基因する給与・報酬

平たく言えば、国内源泉所得とは「日本の中に源泉(稼ぎの元)がある所得」である。国内の不動産、国内での役務提供、国内業務に使われる権利の使用料などがこれに当たる。逆に、日本国外で完結する事業活動から生じた所得は、原則として国内源泉所得ではなく、非居住者であれば日本では課税されない。

事業所得については、非居住者の場合、日本に恒久的施設(PE)があり、その所得がPEに帰属して初めて日本の課税対象となるのが原則だ。PEとは、支店・事務所・工場など事業を行う一定の場所などをいう(国税庁 No.2883)。オフィスを持たずノートPC一台で完結するネット事業では、日本国内にPEを持たないケースが多い。PEがなければ、事業所得としての国内源泉所得は生じにくい。

アフィリエイト収入の源泉はどこか(実態と条約で判断する難所)

ここが本記事最大の難所であり、単純な公式が存在しない領域だ。アフィリエイト・広告収入がどの所得区分に当たり、その源泉がどこにあるのかは、収入の性質と契約実態によって変わる。

まず、収入の性質を見極める必要がある。アフィリエイトや広告収入は、事業として継続的に行っていれば事業所得、規模や態様によっては雑所得に区分される。これが事業所得(またはそれに準じるもの)であれば、前述のとおり非居住者は日本にPEがなければ日本では課税されないのが原則となる。国外で執筆・運営という役務が完結し、日本にPEがなければ、その稼ぎの源泉は日本国内にはないと整理しやすい。

一方で、収入の一部が使用料国内における人的役務の提供の性質を帯びる場合、源泉判定は別の条文で行われる。例えば、日本国内の事業者に対して国内業務に使われる著作権等を提供し、その対価を得ているような場合には、使用料としての国内源泉所得に該当する可能性がある。収入の実態が「広告枠の提供」なのか「著作物の使用許諾」なのか「国内での役務提供」なのかによって、判定の入口が変わる。

支払元が国内のASPか海外のプラットフォームか、という点は、判定の一材料ではあるが決め手ではない。所得の源泉地は、原則として役務がどこで提供されたか・権利がどこで使われたかといった実態で判断されるのであって、支払者の所在地だけで機械的に決まるわけではない。「国内ASP経由だから国内源泉」「海外プラットフォーム経由だから国外源泉」と短絡するのは危険だ。

さらに、これらの国内法上の判定は租税条約によって修正される。事業所得については、多くの租税条約が「PEなければ課税なし」という原則を採り、居住地国(移住先の国)にのみ課税権を認める。使用料についても、条約で源泉地国の課税を減免する取り決めが置かれていることが多い。したがって最終的な課税関係は、国内法と移住先国との租税条約を突き合わせて判断することになる。

結論として、アフィリエイト・ネット収入の源泉判定は、収入の性質・契約実態・移住先国の税制と租税条約を総合して個別に判断すべきものであり、「非居住者になれば一律で日本の課税はゼロ」と断定できるものではない。実際の判断は税理士に相談してほしい。

税理士の視点——PE・租税条約・納税管理人・二重課税

そもそも本当に非居住者かを最初に疑うべきだ。実務では、住民票を抜いても日本国内に持ち家や事業拠点を残し、家族が日本に居住し、頻繁に帰国している——といった実態から、生活の本拠が日本にあると判断され、居住者と認定されるケースがある。非居住者であることは節税スキームの前提だが、その前提自体が最も崩れやすい。

PEの有無も過信できない。日本国内に事務所を借りていなくても、事業の中核を担う代理人が国内にいる、国内に事業用の固定的な場所を継続的に使用しているといった事情があれば、PEありと評価される余地がある。ネット事業だからPEなし、と決めつけるのは早計だ。

移住先国での課税と二重課税にも目を向ける必要がある。非居住者になって日本の課税を免れても、その所得は移住先国で課税されるのが通常だ。「所得税ゼロ」を実現するには、移住先が所得課税を課さない国であるか、租税条約・外国税額控除で二重課税が排除される構造を確認しなければならない。日本の高い税率だけを見て移住を決めると、現地の税負担や社会保険料を見落とす。移住直前に含み益のある資産を持つ場合は、国外転出時課税(出国税)の対象にもなりうる。

手続面では、非居住者となる年に日本での確定申告義務が残る場合、納税管理人を定めて納税地の所轄税務署に届け出る必要がある(国税庁 No.1923)。出国後に日本から税務署の書類を受け取り、申告・納税を行う体制を国内に残しておくものだ。所得税だけでなく消費税の納税管理人にも関わるため、国内ASP等からの収入がある場合は消費税の取扱いも併せて確認したい。

総じて、海外移住による節税は「非居住者になれる実態があり」「収入の源泉が日本国内になく」「移住先で過大な課税を受けない」という三条件が揃って初めて機能する。どれか一つでも崩れれば、想定した節税効果は得られない。

実務家のアクション

  • 住民票の異動だけでなく、生活の本拠(住居・家族・資産・職業・帰国頻度)の実態を非居住者として整えられるかを先に確認する
  • 自分のアフィリエイト・広告収入が事業所得・雑所得・使用料等のいずれの性質かを整理し、収入ごとに源泉地判定を行う
  • 支払元の所在地(国内ASPか海外プラットフォームか)だけで源泉を判断しない。役務提供地・権利の使用地の実態で見る
  • 移住先国の税制と、日本との租税条約(事業所得のPE課税原則・使用料条項)を突き合わせ、二重課税と現地課税を試算する
  • 出国年に日本の申告義務が残るなら、納税管理人の選任・届出を出国前に済ませる
  • 含み益のある有価証券等を持つ場合は国外転出時課税(出国税)の対象可否を事前に確認する
  • 源泉判定・条約適用は個別性が高いため、実行前に国際税務に精通した税理士へ相談する

出典

  • 国税庁 タックスアンサー No.2012「居住者・非居住者の判定(複数の滞在地がある人の場合)」
  • 国税庁 タックスアンサー No.2010「納税義務者となる個人」
  • 国税庁 タックスアンサー No.2878「国内源泉所得の範囲(平成29年分以後)」
  • 国税庁 タックスアンサー No.2883「恒久的施設(PE)(令和元年分以後)」
  • 国税庁 タックスアンサー No.1923「海外勤務と納税管理人の選任又は解任」
  • 財務省「租税条約に関する資料」

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